コミュニティ問題としてのフッ素論争
            -毒の摂取に断固NOといえる消費者のために-
         (総合都市研究 第40号,1990に初出・2000年1月に改訂)

                                    医学博士      村 上   徹

目次
1.要約
2.はじめに
3.フッ素論争とはどういうことか
4.論争の当事者はだれか
5.フッ素応用とは何か
6.世界各国のフッ素問題の現状
7.フッ素化普及の簡略史
8.フッ素応用の問題点
9.問題点の検討 -その1 フッ素は本当に虫歯抑制に効果があるのか
10.問題点の検討 -その2 見せかけだけの虫歯抑制効果
11.論争の天王山 フッ素とガン
12.フッ素による脳機能障害
13.おわりに
14.文献
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1.要 約 
 フッ素論争とは,フッ素の歯科応用の是非につき行われている論争をいう。フッ素応用の代表的な方法は,1ppm程度のフッ素(主にフッ化ナトリウム)を飲料水に添加して,住民に無差別に飲用させるいわゆる水道フッ素化であるが,1945年にこれがアメリカで開始されるや,ただちに市民や科学者による広範な反対運動が惹起した。その後この手段は,第2次大戦後のアメリカ合衆国の圧力によって世界保健機構(WHO)の推進するところとなり,虫歯予防の最も安価かつ効果的な対策と謳われて,WHO加盟の各国に勧奨されるに至った。しかし,それを決定した第22回WHO総会(1969年)では,フランスやイタリア等この措置に反対する国家も多く,とくにイタリアなどは,フッ素をその毒性を以て公衆衛生の敵とまで切言したが,アメリカの圧力を覆すまでには至らなかった。1960~70年代にかけて,西欧先進諸国がこの勧奨に従ったのは,保健衛生に関する国際機構としてのWHOの権威を疑う国家がなかったためであろう。
 しかし,その後,各種巨大産業によって排出されるフッ素は膨大な量に達し,それとともにフッ素の危険性に関する知識はおびただしく蓄積して,フッ素応用の安全性は,WHOの保証するとおりではないことが,様々な実例で明らかになってきた。それとともに,フッ素化が普及し出した西欧各国では,住民とくに医学者から強い反対意見が表明され,あくまで推進の姿勢を崩さぬ保健当局との間に,激しい市民運動が惹起するようになった。その結果これらの各国では,続々として当局側が敗退し,1970年代後半には,フッ素化の運動は俄に後退現象を呈するにいたった。国連人間環境委員会が,水中のフッ素を,二酸化硫黄やDDTなどとともに国際規模で監視測定すべき危険物質として第6番目にランクした(1974年)こともあずかって力があったであろう。これはちょうど,現在の原発に対する反対運動によく似ている。
 しかし,アメリカや日本においては,フッ素推進側は,このような現状を直視して従来の認識を再検討するどころか却って頑なとなり,フッ素被害を危惧する科学者や住民を愚視するようにさえなってきた。フッ素による被害ははたして杷憂にすぎないか。もし根拠があるなら,それはどのような事実で裏づけられているか。
 私は本論で,フッ素論争の膨大な項目の中から重要な事項を幾つか選ぶとともに,中国やインドにおけるフッ素被害の深刻な実情を紹介して,フッ素応用が如何に虫歯予防という公衆衝生的施策としては無意味かつ危険な手段であるかを説明する。また同時に,いままで十分に知られていなかったアメリカのフッ素推進にかかわる行政のスキャンダラスなあり方に光を当て,それとリンクするわが国のフッ素推進者の姿勢が,如何に問題あるものであるかを説明する。
 虫歯の予防が,フッ素の慢性中毒となって,住民の上に大規模な公害を惹き起す可能性は十分ある。それが隠微な,他の疾病にまぎれこむような性質のものだとしたら,それを予防するために世論を啓発することは極めて大切なことになろう。虫歯よりも,心臓疾患や骨の疾患をはじめとする全身の障害の方が,国民にとってはるかに大きなダメージとなることは言うまでもないからである。

2.はじめに
 
 コミュニティの快適性(アメニティ)を保つ要件には様々なものがあるが,その地域・近隣の人間関係が円滑であることは非常に重要で要素である。この場合の円滑な人間関係とは,ただ表面上,滑らかな交際が保たれるということではなく,それを保つ上で,当事者に精神上の苦痛をきたさないということが何よりも肝要である。
 そういう意味で,あるコミュニティが,1つのイデオロギーに由来する紛争に巻き込まれるということは,甚だ不幸だと言わざるを得ない。従って,快適な居住環境を確保するためには,そうした紛争がなるべく起こらないように住民がお互いに努力する事が必要なのはいうまでもなく,万一,そうした事態が惹起するようなおそれがあれば,その原因をよく研究して排除してゆく必要がある。
 これから述べるフッ素問題は,日本中のどんな地域にも,勃発する可能性がある。そして,わが国の歯科保健行政機関や地域歯科医師会は,推進派に同調する傾向があるので,勢いそれに反対する住民運動も相当に熱の入ったものとならざるをえない。まるで戦争のような騒ぎとなることも覚悟した方がよい。かつて新潟市の住民の方々はそれを経験した。 一つのイデオロギー運動が住民を巻き込むということなど,民主主義下の今日ちょっと想像いたしかねようが,そんな想像しかねるような騒ぎが実際に起こるのがフッ素論争というものなので,以下に述べるのは、過去において各国や日本で実際に起こり,今現に起こりつつある事態についての話である。

3.フッ素論争とはどういうことか
 
 コミュニティの住民にフッ素化合物(以下,フッ素)を強制的に摂取させ,それによって虫歯の発生を集団的に抑制しようとする方法(以下,フッ素応用)は,第2次大戦後アメリカが,DDTとともに世界中に広めてきた公衆衛生的政策である。
 しかしながら,元来,フッ素は殺虫剤や殺鼠剤等の毒物として医学史に登場してきた物質であるため,これに対する批判・反対も根づよく(1950年以降,全米でこのために行われた住民投票の回数は約2000回に及ぶ),この是非に関する問題がいわゆる”フッ素論争”と呼ばれていることである。
 この論争は,フッ素が普及するにつれ,ほぼ世界中の先進国で烈しく繰り広げられるようになり,現在でも人口の約半数がフッ素添加飲料水を飲まされているアメリカなどでは,実際に激しい反対運動が展開している。日本もその例外ではなく,過去およそ40年くらいにわたってこの論争が継続しており,時々新開を賑わすことがあるのはご承知のとおりである。
 私は,たまたま,私が開業する前橋市のとなりの渋川市でこの論争が惹起し,同地区から私の診療所に通院してくる患者さんからこの問題の可否を質問されるようになったのを契機に,歯科医師としてこれにどう対処すべきか決着をつけるため,相当長い時間を費やしてこの問題に関する文献を徹底的に調べてみた経験を有する。そして,その結果,この問題についてはっきりした結論に到達した。その結論を一口に言えば,「フッ素応用は虫歯の予防を目的とする公衆衛生手段としては殆ど意味をなさない」ということである。
 しかし,勿論,そうは考えない人たちもいる。そこで論争ということになるわけであるが,その論争が国民の負託に応えるため十分に科学的医学的に行われているのかというと残念ながら事実は全く逆であり,この問題を考え続けてゆくと,これを推進するという立場の予防歯科学とか口腔衛生学とか呼ばれる科学が,果たして,国民の福祉に貢献するためにあるのかという極めて深刻な疑問にも逢着せざるを得なくなる。

4.論争の当事者はだれか

 フッ素論争は,もちろん論争の常として2つの極に分かれた陣営で行われている。便宜上これを“推進派”と“反対派”という言葉で表現するが,わが国において推進派の主体をなしている者は,日本口腔衛生学会フッ素研究部会に集まる4~5人の口腔衛生学者を中心とする歯科医師と,その学者らの弟子やその関係者が作る応援団体であり,その背後に,日本歯科医師会,日本学校歯科医会,厚生省の一部局,文部省の一部局などが系列をなしている。尤も,これらの組織のうち,官庁は必ずしも表だって賛成派としての態度を鮮明にしてはいないが,口腔衛生学者と友好関係を保つ必要上,彼らに対しては極めて同調的であり,世論の間隙をついてフッ素を日本中に普及させようとする姿勢を崩してはいない。 さて,これに対立するのは反対派であるが,これはあくまでその地域の住民運動が中心であり,その市民運動に同調する組織として,主婦連や消費者連盟等の各種団体や労組などがあり,その運動に理論的根拠を与える者として,衛生学者,遺伝学者,薬理学者等の医学者(個人)と,彼らの主張に賛同する医師,歯科医師や環境保護運動家,弁護士などがいる。
 しかし,フッ素論争は,ある医学的事実をどう評価するかが中心である関係上,実際には医師や歯科医師でないと論議の核心には参加が難しい。そんなわけで,フッ素論争は,市民運動という,心情的に多分に反権力的な一般市民に支えられた医師や歯科医師らと,フッ素応用を専攻した口腔衛生学者という,フッ素を推進することによって利益を得る立場の者との論争になるのは必然であろう。世間ではこれを,保健問題の反体制運動と捉える傾向があるが,この点,日本とアメリカとではニュアンスが頗る異なっているので,そういう捉え方では事態を正確に認識することはできない。

5.フッ素応用とは何か
  さてここで,フッ素応用とはどういう方法をいうのか,簡単に説明する。これを一覧表にしたものが表1である。

名称 方法と問題点
水道フッ素化

1ppmF程度のフッ化ナトリウムを給水場において水道水に添加し,住民に飲用
させる。虫歯の抑制率は約30%といわれるが,全く効果がないという研究も多く論争点となっている。強制投薬による人権侵害が問題。

フッ素洗口

1000ppmF程度のフッ化ナトリウムや酸性フッ素燐酸溶液を1回/週に1分間
程度口中に含ませて,クチュクチュすすがせ,その後この液を吐き出させる
(週1回法)。この他にも1週1回法から5回法まで色々あるが,洗口の頻度が少なくなるに従い,使用するフッ化物の濃度を高くしないと効果がでない。洗口液は吐き出させるのを原則とするが,かつてはそのまま飲み込ませる方法もあり,これで有効とした論文もある。体内に吸収されるフッ素量は使用する液量の1/3程度と推定される。抑制率は方法によりバラつきがあるが,飲料水フッ素化より効果が劣るとするのが一般的。

フッ素塗布

9000ppmFの高濃度のフッ素溶液を2~3cc綿球に含ませ,幼児の歯の表面に塗る。 年に数回塗るのを原則とする。抑制率については20~50%といわれるが,厳密な薬効判定の科学的方法(二重目隠し法と比較対照試験)を適用した成績では無効という報告も多く,効果は明らかではない。塗布後の飲み込み量は約30% 程度といわれるが,高濃度のためフッ素摂取量が高く,危険性を指摘する学者もあり(死亡事故あり),スェーデンでは濃度を1/10にさげているという。

フッ素入り歯磨き剤 1000ppm程度のフッ素を歯磨き剤に添加する。効果は医学的には判定されていない。個人により飲み込み量が異なり,イギリスではこの使用で斑状歯が発生して,メーカーより2000人に賠償金が支払われている。

              表1  フッ素応用の種類と問題点

 

  全身応用と局所応用とは,厳密に医学的に区別できるかどうか疑問であるが,通例に従ってこう区別しておく。
この中で世界中で大きな問題になっているのは水道フッ素化である。これに比べれば,局所応用などは一部の国民が対象となるだけであり,しかも事前に説明が与えられているとすれば,後は個人の選択の問題となってくるだけなので,きほど深刻ではないとされ,フッ素化を中止したヨーロッパ先進諸国のなかでも,あえて問題にしていない国もあるようだが,わが国では,当面,このフッ素洗口を普及させる運動が紛糾し,各地で反対運動が展開されているのが現状である。この理由について詳しく述べると相当の紙幅を要するためここでは簡略に済ませるが,一言でいえば,推進派は,フッ素洗口を以て“フッ素化の橋頭堡”としているためである。
 すなわち,フッ素洗口運動とは,文部省の行政権限の下に,ひとまず,幼稚園小学校中学校などの生徒に強制的にフッ素洗口させることを”制度”として定着させるのを狙いとし,これに成功した暁には,これを橋頭堡として全国の水道フッ素化を進めようとねらっているのである。
 これはまことにフェナチックなイデオロギー運動であり,これを推進している団体は,かつての国際共産主義思想による革命団体の如く極めて教条主義的である。その相言葉は「21世紀までに,わが国の学童のDMFT(これは歯科学の用語で,decayed…虫の食った,missing…抜歯された,filled…充填された,t‥歯,即ち虫歯の経験歯数を意味する)を,WHO(世界保健機構)の提唱した3にしよう」というのであり,この”錦の美旗”のためには絶対的な態度で異論を排除するのが特徴である。その点,一種の宗教によく似ている。 カール・R・ポパーの科学哲学によるまでもなく,科学理論とは,あくまで反証可能な知識体系でなければならず,その反証を論理や実証で克服してこそ始めて科学となるのであるが,推進派は,反論をただ否定するか罵倒するかだけである。否定も罵倒も無理とわかると,今度は政治的に反対者の淘汰を計る。そのためには,国際政治や諜報活動で繁用されるディスインフォメーション(攪乱情報・ニセ情報)を用いて反対者の学的世界からの抹殺や攪乱を図る。科学の世界でこんなことが許されないのは当然であるが,アメリカでは実際に保健行政機関(合衆国公衆衛生局-USPHSとその傘下各機関)が恥もなくこうしたスキャンダルに手をかしている有様で,さすがに見かねたアメリカ化学学会の機関誌の“ケミカル&エンジニアリング・ニュース”が特集記事を組んで,内情を暴露し世論を喚起しようとした程である
 アメリカ歯科医師会(American Dental Association-ADA)は,広報メディアに,雑誌(JADA)と新聞(ADA News)を有しているが,この両者には,何の州の何という町で推進派が住民投票に勝ってフッ素化を開始したとか,どことかの市では何年前には推進派が負けたのに今度は勝ち,そのお陰でフッ素添加水道を飲用するアメリカの人口は何人になったとか,まるで政党機関紙の選挙報道のような記事が毎号のように出てくる。ADAの幹部はそれだけフッ素普及レースに熱中しているわけである。私がフッ素推進運動をイデオロギー運動と呼ぶのは,けして私だけの判断ではない。
 しかし,イデオロギー運動と見ても,日本の場合は非常にいかがわしい。確かにWHOは水道フッ素化を虫歯抑制のため有効な手段として,これを加盟各国に推奨したことは事実であるが,高い濃度のフッ素溶液を使用するために事故の起こりやすいフッ素洗口などを,別に鳴物入りで支持宣伝しているわけではない。そうである以上,推進派は,まず何をおいても,厚生省や国会を説得して水道フッ素化を全国に普及させるのが本筋な筈であるが,じつは,この本筋は,そう簡単に実現しないことは彼らといえども十分承知しているのである。
 この間の事情について,1978年に元厚生省歯科衛生課長であった熊美光房氏は次のように述べている。
 「水道水へのフッ素化合物添加は,わが国の現状では,将来とも実現は不可能であるといえる。なぜなら,水道行政の元締である厚生省環境衛生局水道環境部水道整備課が,水道法の目的と義務の規定をたてにして,上水道のフッ素添加に難色を示しているからである。(略)日本において水道フッ素添加は絶望的だとして諦めた方が利口というものであろう。」
 能美氏が伝える厚生省水道整備課のこのような態度は,水道行政をあずかるものとしてまことに妥当とおもわれるが,ここには,ヨーロッパ各国なかんずく西独(当時)の影響がつよく認められる。すなわち,西独では,水道事業当局者である“ドイツ・ガス水道専門家協会”が,飲料水に関係する医歯学や法律家などの専門研究者を委員として専門委員会を設置し,ここで水道フッ素化について,その端緒となったアメリカの研究結果の学問的吟味をはじめとしてすべての論争点を徹底的に検討したのである。その結果は,『Dokumentation zur Frage der Trinkwasserfluoridierung(水道フッ素化の疑問に関する証明記録)』(1975)という長大な論文にまとめられているが,これは,日本語に全訳されており,簡単に入手できる。読めばすぐに分かるがが,ドイツ的徹底主義とはこういうものかと感嘆するくらい徹底したもので,アメリカ厚生省公衆衛生局やそれと結託したWHOのフッ素化戦略の非科学性を真向から批判してこれを完膚なきまでに否定したものである。
 そういった事情が背景にあるため,水道フッ素化実現を目指して日本の推進派がいくらこの点で厚生省を攻めたてても,日本においては,フッ素化のゴーサインなどが簡単に出るものではない。事実,彼らは,1970年代に新潟市の水道をフッ素化しようとして大規模な運動を展開したのであるが,最後になって,水道責任者の拒絶に出あって挫折した経験がある。1970年代といえば,勿論さきの西独の論文が刊行される前であり,このときの水道責任者は,独自の判断でフッ素添加に反対したのであろうが,その見識の高さは敬意を表するに値する。このような役人が日本にいたという事実は,後代の我々に,日本に対する自信と誇りを呼び起こさせるほどである。
 少し脇道にそれたが,こんな経緯があるものだから,推進派はこんな強硬な反対論が出ない方面でひとまず橋頭堡を築く方が得策とみて,健康政策では無知に近い文部省などに勧告書を提出したりするのである。
 ここで文部省が関係してくるのは,推進派は,学校という場で,集団で子供にフッ素洗口させようと計っているからである。そうなると,当然,日教組が関係してくるということになる。科学的論争が,にわかに政治的色彩を帯びざるを得なくなるのであるが,それでは,世界的にこの論争はどのような状況になっているのか。次にそれを概観してみよう。

6.世界各国のフッ素問題の現状
 
 世界各国と言っても,フッ素問題が激しく論争され,それが社会的事件として継続しているのはアメリカを中心とするイギリス,カナダ,オーストラリア,ニュージーランド等の英語圏の諸国家だけである。イギリス以外のヨーロッパ大陸の先進諸国は,1970年代ですでにこの問題には決着をつけており,フッ素は過去の問題となりつつある。実際,これらの国家では,ごく小規模な実験区を除いて,フッ素化飲料水を住民に供給している国などは.殆どない。オランダなどは,憲法で水道へのフッ素添加を非合法としている程である。その規模は表2に示してあるが,東ヨーロッパやソ連では,その後大規模な政変が続いているので,実際の現況は,この数値とはかなり異なっているものと推定される。

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表2 村上徹訳著・「プリニウスの迷信」30頁の表1を引用。

 しかし,そのヨーロッパ諸国のうちイギリスだけは例外で,ききに触れた西独の証明記録によれば,イギリスと北アイルランドでは人口の7%が,アイルランドでは59%の176万人がフッ素化水道水を飲用させられているということであるが,このため現在広範な市民運動が起こりつつあり,このためブレア政権に交替してからは政府主導により,フッ素化の安全性について再評価する事が決定し,1999年段階でこの委員会の構成が決定した。
現在のロシアや東ヨーロッパの旧共産圏諸国については不明である。
 アジアでフッ素化を行っている国としてはシンガポールやホンコンがよく知られていたが,中国では,十数年継続してフッ素化を行ってきた広州市で,広汎な住民がフッ素慢性中毒に罹患しているという事実が明らかになってから深刻な論争が勃発し,現在では反対派の主張の正当性が認められるという形で論争が克服され,フッ素化政策とは決別した。従って,中国に返還後のホンコンも中止となったものと思われる。この中国の動向ははただちに台湾に影響し,台湾でもフッ素の中毒症状である斑状歯が発見され,論争が起こり,中止になった。
 フッ素の中毒症状は,歯牙発育期の子供に起こる”斑状歯,歯牙フッ素症”( mottled tooth,dental fluorosis)と,成人の骨格系に異常を来す“骨フッ素症, 骨硬化症”(skeletal fluorosis, osteosclerosis )が有名であるが,歯の異常は簡単に検診で発見できるものの,骨の初期の異常はレントゲン等による相当詳しい検査でも発見は難しい。広州市の場合も,フッ素化以前に死亡した人の骨を墓から何体も掘り出し,その骨に含有されるフッ素量を,フッ素添加水を相当期間飲用してから死亡した人の骨と比較するという大がかりな研究が行われて,はじめて,飲料水中のフッ素による慢性中毒だということが確認できたものである。
 もともと中国は,あの広大な全土の相当な地域が高フッ素地帯(自然の飲料水中に高い濃度のフッ素を含有する地域)であり,水道が普及していないために膨大な数のフッ素中毒患者(実に全人口の約9%!)がおり,特に内蒙古自治区などの乾燥地帯では重症の者が多く,そのために就労人口が減り,経済成長に影響を来すほど深刻な問題となっている。 これらの事実は,英文で発表される機会がすくないために,従来ほとんど欧米には知られておらず,1985年に刊行されたアメリカ環境保護庁(EPA)のフッ素に関する膨大なレポートにも掲載されていないが,1994年に北京で国際フッ素研究学会が開催されて西欧の研究者が中国の現況を視察してからはよく知られるようになった。私も中国の研究者とは個人的に交流をかさねており,現地を視察しているが,その悲惨なフッ素中毒症の実態は,水道が完備した日本人には想像もつかない。
  中国が官民あげて如何に惨憺たるフッ素慢性中毒症の流行と闘っているかは,わが国の「フッ素研究」という専門誌に,毎号中国人学者の論文が翻訳掲載されているところからよく理解できる。
 現在の中国は,フッ素の毒性研究に関してはインドとともに,最も大規模な研究が行われている国家である。どうしてこんなに盛んな研究が行われるようになったかというと,フッ素による被害がまことに深刻であるということがその最も大きな理由であるが,それと同時に,現状を直視し,フッ素を必須微量元素として認識させたがるアメリカの価値観から脱却することができた,フッ素を毒物として認識する視座を構築できたからである。当時の北京中医研究院の侯教授は次のように述べている。
 「研究者として数十年辿ってきた道を省みると,われわれが客観的に存在する物事を認識するには,たえず自己更新せねばならぬのをつくづく感じます。すなわちすべての認識は実践から始まり,実賎しながら模索して進み,何回かの試行錯誤を経て経験を積み,租さを除き精を採り,偽者と本物をよく見分けたうえで,始めて浅い認識を深くしうる。このようにわれわれの認識が段々と物事の本質に近づいて行きます。それ故に,研究者は常に客観的な真理を追及する立場を取るべきです。
自分自身の見解は絶対的に正しいと威張って(略)個人の間違った見解を守るために,客観の事実を敢えて抹殺し或は歪曲することは非科学的ではないでしょうか。われわれ医学界には以上の考え方を裏付ける実例と経験教訓はいくらでもあります。」
 侯教授は,フッ素の場合がまさにそうだと言う。私の言葉でここを補足すれば,この「間違った見解を守るために,客観の事実を敢えて抹殺し或は歪曲」しているのはアメリカの公衆衛生局とそれと盲従するWHOであり,彼らに追従する各国のフッ素推進派だということになる。私がこう言っても,恐らく読者は半信半疑であろう。いやしくも生命科学や保健行政の分野で,そんなスキャンダラスなことが起こるわけがない。そうお思いになることと思う。それが常識だ。しかし,このフッ素論争という世界では,その常識が通用しない。それくらい恐ろしく非常識的なことが罷り通っている。それがどんな有様であるか,フッ素応用の簡単な歴史を振り返りながら説明することとする。

7.フッ素応用普及の簡略史

 1910年代の終わりに,アメリカのコロラド州の開業歯科医師から,この地域に,真っ茶色な奇妙な歯をもつ住民がいるということが報告された。さて,そう言われてみると,別にコロラド州だけに限ったわけではない。あっちにもいる,こっちにもいる,これはきっと,歯の風土病に違いないというわけで,この原因が何であるか歯科の学者の興味を強く引くようになった。
 この奇妙な歯が“斑状歯”といわれるもので,相当な期間の研究のすえ,この原因が飲料水中のフッ素によるものだということが判った。そして1930年代の後半に,アメリカ公衆衛生局が,飲料水中のフッ素濃度と斑状歯発生との関係を研究するため大がかりな疫学調査に乗り出した。この研究を主管したのが後に有名になった官僚歯科医師H・トレンドリー・ディーンである。
 しかし,その調査の途中で,ディーンは不思議な現象に気付いたという。それは何かというと,『斑状歯をもつ児童にはむし歯がすくないようだ』という現象である。斑状歯は,歯のエナメル質が,顎骨のなかで代謝を続けて発育をしているときに,石灰化のメカニズムが障害を受け,エナメル芽細胞が機能不全になって発生するものなので,彼はもっぱら子供を対象に調査をしていたのである。
 この虫歯の発生頻度と,飲用している水に含有されているフッ素濃との”逆比例の関係”をデーンは図1に示した。このグラフは,歯科の世界で稀に見る大発見として世界中に喧伝され,彼は極めて有名な存在になった。
 

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また,ディーンは斑状歯を,非常に程度の軽いものから重症のものまで5投階に分類した。これがデイーンの分類である。わが国にも厚生省分類というのがあるが,これはディーンの分類に多少手を加えたものにすぎず,ここでは触れない。
 斑状歯の軽いものは,「歯の表面の白い斑点や黄色い縞が少し目につく」という程度のものである。これが大体1ppm程度のフッ素が入いっている飲料水を日常摂取する事によって起こると考えられた。しかもこの斑状歯を有する子供は,そうでない子供より明瞭に虫歯が少ない,と彼は判断した。そこで彼は次のように結論した。
 「飲料水中に含有される1ppmのフッ素は,虫歯を著明に抑制するが,斑状歯を異常に増加させるものではない。」
 それならば,飲料水の中のフッ素濃度を1ppmのレベルにコントロールしてやれば,目に見える障害なしに虫歯を予防することができるのではないか。これが飲料水フッ素化の科学的根拠といわれる理論である。1ppmというのは大雑把な数値で,実際にはその地域の気温で水の消費量が異なるので多少補正する必要が生じるのであるが,詳しい話は省略する。
 ディーンの下した結論は,彼のグラフを見ている限り,大体そんなふうに考えていいかなというように受け取られるが,水道フッ素化という思想が,WHOの権威の下に世界各国に普及するにつれて各国で同様な研究が行われ,飲料水中のフッ素濃度と虫歯発生の頻度とは,必ずしも,ディーンのいうようにキレイに逆比例してばかりいず,場合によっては正の比例,すなわち,フッ素の摂取が多ければ虫歯も余計に発生するという事があることもわかってきた。今から考えれば,ディーンの研究は恐ろしく単純かつ作為的で,多因子疾患である虫歯を,強引にフッ素という一つの因子で括ろうとするところに誤りがあったのであるが,とにかく彼の指摘は疑へぬ事実として,虫歯の対策に苦慮していた歯科保健行政の関係者の心を捉えたことも確かなのであろう。
 ディーンの結論が報告されたのは1938年から1942年にかけてであるが,実際にフッ素化の社会実験が行われたのは,それからわずか3年後の1945年から47年にかけてである。すなわち,ミシガン州のグランドラピッズ市,ニューヨーク州ニューバーグ市,イリノイ州エバンストン市(以上アメリカ)と,カナダのブラントフォード市でそれぞれ水道にフッ素を添加する実験が行われ,その結果による虫歯の発生率が検討された結果,いずれも,ディーンの結論に合致するような素晴らしい結果が得られたとされている。
 1ppmのフッ素を人工的に添加した実験地区には,いずれもフッ素濃度の低い地域が比較対照都市として用意され,その2つの都市の児童のDMFTを測定してみると,50~70%もの差が見られた,つまり,虫歯の発生がそれだけ抑制されたと報告された。
 また,ニューバーグ市とグランドラピッズ市の実験では,推進派の言では「非常に綿密な医学的検査も行われ」たが,その結果では,実験都市と比較対照都市の児童の全身的発育と健康状態に何らの差異がなかったとも報告されている。ここで,現在なおも,盛んに宣伝されているフッ素の効果が,いわば”神話”として樹立したのである。その神話とは,「フッ素化の安全性は科学的に完璧に解明されてきている。フッ素には,虫歯を減らすほか何らの為害作用もなく,フッ素化は人間の英知の所産とも云うべき偉大な公衆衛生的施策であって,これに異を唱える連中は,徒に人々の不安をかきたてて社会を混乱に陥れる輩であるというものである。
 大時代な表現として滑稽に思う人もいようが,こんな幼稚な主張が,今でも臆面もなく,大学教授によってまでなされているのがわが国の「予防歯科」という世界であるのを忘れてはならない。
 後ほど言及するが,アメリカではフッ素論争がまことに白熱した騒ぎとなっている。推進者は反対者に“anti-fluoridationist”(反フッ素化主義者)というレッテル張りをするが,この言葉のニュアンスには,上述の誹謗の意味合いがまことに濃厚に看守される。いや,濃厚どころか,もっと偏狭激越な態度さえ感じ取れる。
 アメリカには現在も,3K団やジョン・バーチ協会などという非合法な過激右翼団体があるが,フッ素賛成派によれば,「声高にフッ素反対を叫ぶ者は,殆どがこうした過激団体のメンバーであり,たとえ彼らが合法的な科学者としての資格証明を手にしていても,彼らは感情的,幻想的,非科学的,欺瞞的人物にすぎない」ということになる。これに比べれば,さきの日本の大学教授の誹謗など可愛いらしいくらいのものかもしれない。
 われわれ日本人は”自由の国アメリカ”というイメージをつい抱きがちであるが,アメリカ社会には,こういう偏狭さがあることを十分承知しておかないとフッ素論争に対してバランスの取れた見方は難しいということになる。アメリカには確かに発言の自由もあるが,同時に気に食わない者は殺す自由もある銃社会だという事も忘れてはならない。
 さて,以上は,アメリカにおけるフッ素化の簡略な歴史であるが,これはあくまで「おもて」にすぎない。あえて「おもて」というからには「裏」があるという事になるが,様々な事実を突き合わせてみると,どうも裏の方が事実らしい。とくに現在は戦後50年たって,戦中から冷戦にかけてのアメリカ政府の機密文書が続々と解禁になっており,隠されてきた史実が次々と新しい光で照らし出されるようになってきつつある。それらを参照してみると,フッ素化の歴史はとてもそんな「表」のようなキレイごとではなく,常識的にはとても信じられないようなスキャンダラスな策謀が執念深く一貫して続けられてきたと,複数のジャーナリストらが事実を暴きレポートを発表している。それらを要約すると次のようになる。
 
 ヨーロッパにおける産業革命以来,フッ素は主にフッ化水素の形で,各種の金属精錬工場や燐酸肥料製造工場の周辺の住民に深刻な公害を与えてきた。民主主義の確立とともに,そうした被害は,次第に裁判にかけられるようになり,莫大な損害賠償が認められるようになってきた。新世界であるアメリカの各巨大企業は,賠償という莫大なコストの負担をさけ,アメリカの産業を優位に立たせるために,フッ素の毒性に関する事実を一切隠蔽することとし,監視当局である公衆衛生局を抱き込み国民の注意をそらすために遠大な戦略を樹立した。この戦略作戦の中心となった企業は、アメリカアルミニウム株式会社つまり,アルコアであった。
 1920~30年代にかけて,アルミニウムと燐酸肥料の生産量は激増していた。その副産物として,歓迎されざる物質であるフッ化物の蓄積もおびただしい量にのぼり,各社はこの毒物の始末に頭を痛めていたのである。メロン研究所(メロン研究所は、アルコアのオーナーであるメロン財閥の付属機関)の化学研究者ジエラルド・コックスが,飲料水中のフッ素濃度と虫歯の発生率に関する研究に目をとどめ,巧妙な解決策を見出した。フッ化物を飲料水に混ぜて消費するのである。その大儀名分は“フッ素は虫歯を減らす”ということにする。
 この戦略の障害は,アメリカ医師会とアメリカ歯科医師会であった。現在と全く違って当時のこの両医学団体は,あくまで科学団体としてフッ素の毒性を考慮して,フッ素添加に警告を発していたのである。しかし,コックスはウイスコンシン州の保健官僚であった歯科医師J・フリッシュにもちかけてフッ素化推進の一大ギャンペーンにとりかかった。フリッシュはF・バルとともに政治的キャンペーンを開始し,アメリカ歯科医師会や公衆衛生局に対して,水道フッ素化を是認するよう圧力をかけた。
 彼らには非常に幸運なことに,公衆衛生局は当時アメリカ財務省の管轄下に置かれており,財務長官にはアンドリュー・メロンやオスカー・ユーイング等のこの企業の大株主が次々と就任して官僚らを指図し,フッ素の毒性に関しては一貫して言論統制を徹底した。統制するばかりか,さらに積極的にディスインフォメーションを流布させ,このためアメリカの毒性研究に関する言論空間は,フッ素に関する限りきわめて歪んだものとなってしまったのである。
 さらに第二次世界大戦の勃発が彼らに味方した。
フッ素は原爆の材料であるウランやプルトニウムの濃縮には不可欠な物質であるため,何百万ポンドという量のフッ素(フッ化水素)の製造が急務となったが,そのために起こった甚大な公害は,国家の安全のため全てが徹底的に隠蔽された。そして,裁判を免れるために,逆に「フッ素は虫歯を減らすために必須な微量元素であり,国民は適量のフッ素を摂取すべきである」という理論が様々の学者らによって提唱され,戦争が勝利したためにその理論がそのまま今日にまで是正もされずに及んだ。

 フッ素問題について特別の立場をとるものではない,と公言しているアメリカ化学学会の機関誌である「ケミカル&エンジニャリング・ニュース」は,この点について次のように述べている。

 「1945年に公衆衛生局は,最初ニューヨーク州とミシガン州の2つの都市で,10年間の人工的フッ素添加試験を計画した。2つの州のどちらの都市も,比較対照都市が選ばれ,そこではフッ素を添加しない飲料水が供給された。当局はこの試験が終了するまで,あらゆる地域のフッ素化をすべて推奨しない方針であった。しかし,ウイスコンシン州の保健官僚であるフランシス・A・バルとジョン・フリッシュの2人が早くもフッ素化の効果に確信を抱き,公衆衛生局にフッ素化の是認を迫る全国的なキャンペーンに乗り出した。(略)飲料水フッ素化という運動は,最初から,科学的企画というよりは,政治的キャンペーンによって主導されてきたのであった。1961年6月州歯科医師会理事と公衆衛生局担当官との会合で,バルはフッ素化推進の戦術を紹介してこう述べた。『たしかに,ある連中がフッ素化に反対しているのは事実だが,貴君らは,真っ向から彼らの反対を打ち破らねばならない。フッ素の毒性に関する疑問にしても同様である。そんな疑問をもたせるな。そんな議論をとりあうな。そしてこう言え。ひたすら,ただこう言いつづけるのだ。“われわれは,フッ素には,虫歯を減らす効果以外に,どんな作用もないことを完全に知りつくしている”と。もしそれで論争になったら,ただ,やりすごしてしまえ。決して自分自身のうちにそんな疑問を育ててはならない」。
       
 このやり方は,50年後の現在ですら,そっくりそのまま,アメリカ歯科医師会や公衆衛生局のフッ素化推進戦術として受けつがれているのである。そしてわが国のフッ素推進者らが,この戦術をそっくり踏襲していることはいうまでもない。フッ素化に反対した医師会や歯科医師会がなぜ推進派にくら替えするようになったかについては込み入ったカラクリが明らかになっているが,ここでは触れない。
 さきに私は,フッ素問題においては科学的な常識は通用しないと述べたが,あながち誇張ではないことがお判りいただけただろう。アルミニウム製造企業とこの2人のアジテ一夕ーとの間にどのような取引があったのか不明であるが,現在のアメリカで水道に添加されているフッ化物(ヘキサフルオロケイ酸,フッ化ケイ酸ナトリウム,フッ化ナトリウム)は,すべてアルミニウム精錬企業や燐酸肥料製造の副産物であり,その年間消費量は合計14万3千トンという莫大な量なので,これを水道水に混ぜて消費することができなくなると,業者はただちに捨て場に困る。
 原発の放射性廃棄物もきわめて厄介な問題であるが,フッ素性廃棄物も同様である。水道フッ素化というアイデアは,その点実に巧妙な企画であったことは間違いはない。このアイデアを思いついたコックスは,後に歯科大学の教授に転職してさらにフッ素化の宣伝に従事するようになる。

8.フッ素応用の問題点
 
 さて,以上の推移の中で見落してはならない重要なポイントが1つある。それは何かというと,公衆衛生局は,フッ素という物質に対する態度を,ディーンの研究の経過と前後して180度転換したということである。つまり,フッ素という物質に対する視座を,“毒物”から“薬物”に転換したのである。このため,飲料水の汚染を規制する権限を,1975年に公衆衛生局から引き継いだ環境保護庁のフッ素に対する姿勢も極めて歪んだものとならざるを得ず,飲料水中のフッ素の最大許容量を4ppmにまでひきあげるという暴挙をあえてし,それに抗議して,この官庁の職員組合すらが当局を告訴するというような,未曾有の事態が生じている。(因みに,日本では0.8ppmであり,中国では0.4ppmである。)
 最初,ディーンが研究していたのは,“毒物”であるフッ素の中毒症状としての斑状歯についてであった。しかし,フッ素と虫歯抑制との関連が公表されると,研究の力点は直ちにそちらの方にシフトされ,ひたすら虫歯を抑制する“薬物”として扱われるようになってしまったのである。いや,そればかりではない。フッ素化が政策として実施されるようになってからは,この政策に対する反対運動を封じ込めるため,この政策に疑問を抱かせるような結果を提出する研究や研究者を様々な手段で迫害するという,まるで中世暗黒時代のような手段までとるに至ったのである。その偏狭さ苛烈さは,科学論争と言わんより,イデオロギーをめぐる政治論争そのものであり,とても自由主義社会の出来事とは思えない。しかも,その実態は,これまで,この問題に直面した人達以外には殆ど知られることなく経過したものである。
 何故か。それは“WHO”ゃ“FDI”(世界歯科医師連盟)という”権威ある国際機関”が,このイデオロギーと完全にリンクして,フッ素応用を虫歯抑制の世界戦略として採用し,その普及に熱中するようになってきたためである。そのため,フッ素を危険視したり,フッ素化に反対を唱えることは,医学の世界で”村八分”にあうことすら覚悟しなければならいような事態にまでなってしまったのである。その“村八分”作戦の指令本部が公衆衛生局傘下の国立歯学研究所(National Institute of Dental Research-NIDR)であり,また,その尖兵の役割を背負ったのが口腔衛生学者,歯科医師会の幹部らである。(ここに,先に述べた原爆開発以来の軍部の利害や,それによって利益を得る産軍複合体の戦略をかいま見るのは容易であろう。何しろ,アメリカの産軍複合体とは,本気になって軍縮と取り組みそのために利害が対立したケネディ大統領すら暗殺する勢力なのであるから。)
 かくして,フッ素論争は今日のような,きわめてこんがらがってネジ曲がった状態になってきたのである。科学として,まことに異様な状態だとしか言いようがない。
 
 それでは,フッ素反対論者が,推進側に対して提出している疑念にはどのようなものがあるか,その論点を個条書きに列挙してみよう。
① フッ素には,はたして虫歯抑制の効果があるか。
フッ素による虫歯抑制実験の統計学的なデータ解析方法に対する疑問。
② 使用されるフッ素は無害か。
(A)水道フッ素化の場合
  イ.水道に添加するフッ素は,住民の全てが利用するものである以上,誰にとっても安全でなければならないが,果たしそうか。アレルギー,腎臓障害者に対するフッ素の作用,突然変異原性,酵素障害,遺伝子障害,発癌性,先天的奇形発生に対するフッ素の害作用への危惧。
  口.特に長期連用によって骨フッ素症(骨硬化症),歯牙フッ素症(斑状歯)が発生する惧れは全くないか。また,最近ではフッ素は脳血液関門を透過し,脳細胞中に蓄積することが知られ,アルミニウムや鉛等の重金属と協同作用をして,アルツハイマー病や学習機能障害(少年非行・犯罪者の精神的素因)のリスクファクターとなることが議論されているが,推進者はそのような危険性まで視野に入れて考えているのか。
(B)濃厚溶液を使用するフッ素局所応用の場合
  ハ.骨粗鬆症とフッ素の問題。推進派は,骨粗鬆症の治療に,実験的にフッ素が投与されている事実をとりあげ,あたかもフッ素が骨の石灰化にとって有益であるかのように力説するが,この説は医学的に妥当といえるか。
  二.ハと関連して,推進派は一定のフッ素を摂取することは骨格を強くするために有益であり,フッ素は必須栄養素だと説くが,これは栄養学的に事実として認められるか。
  ホ.フッ素洗口(250-1000ppm溶液使用)。フッ素塗布(9000ppm溶液使用)とともに,被適用者は1ppmに比較して,はるかに大量のフッ素に曝露されることになるが,これによる急性中毒,また連用による慢性中毒の危険は全くないか。ないとする推進派の主張は,どのような研究で裏付けられているのか。
  へ.局所応用によってフッ素が有効であるとする実験は,その実験の計画性において十分な科学性が認められるか。薬効判定の科学的手続きである“二重目かくし法”と”比較対照試験”の結果を経ずして,薬効を主張することが許されるか。また,厳密な科学的手続きを経た実験結果では,虫歯抑制効果が,従来主張されているものより格段に少なく報告されており,これは,有効説の主張の根拠とされてきたいままでの実験結果の信用性を著しく損なう。
(C)環境汚染に対する危惧
  ト.飲料水フッ素化,フッ素局所応用とも長期にわたって大量のフッ素を環境に放出する結果になるが,国連人間環境委員会の議決を無視したこのやり方を続けて環境汚染の心配はないといえるか。推進派は,これらのフッ素は結局は海に運ばれ,膨大な海水に混じり,元来海水は1.3ppm程度のフッ素を含有している以上心配は無用であると説くが,この説明は,食物連鎖による濃縮された毒物の摂取という過去の公害の事実を無視したものであり,あまりにも単純かつ楽天的ではなかろうか。現にこの問題は,環境ホルモンとして新しい恐怖の原因をつくり出しているではないか。
(D)人権上の問題点
  チ.1ppmフッ素化は,結局,公共飲料水を通じて,一種の投薬の強制である。伝染病とちがって,虫歯という社会を危機に陥れる心配のない疾患の予防で,このような強制投薬を住民に強いる権限が行政にあるのか。これは,第二次大戦中のナチスの優生政策の批判を通じて確立された人権を根底から無視蹂躪するものである。また,学校における集団的フッ素洗口も,学校という権力を背景に児童やその父母に承認を求める以上,事実上強制投薬と同じになる。フッ素がイヤだという学童や保護者の自由は十分に確保されているか。(これは飲料水の消毒のために行う塩素添加などと,性格が根本的に違うことにご注意頂きたい。)
(E)バイオエシックス(医療倫理)とのかね合い.
  リ.臓器移植等の先端医療技術の開発に伴って,医療行為の倫理基準も,年を追って格段に厳しくなり,インフォームドコンセントの確立が世界的に普及しつつあるが,フッ素応用は,これらの基準に抵触することなく実施されているか。ここでは利益と危険性の情報が公平に提供された上で,その選択はあくまで利用者の判断に従うことが前提となる。

 以上の問題点は,いずれも,ゆるがせにできない重要な事項ばかりである。従って,フッ素応用を実施するに当たっては,これらの項目の一つ一つについて吟味を重ね,その結果に関する情報を十分に公開して,始めて開始されるべきなのはいうまでもない。私見をいえば,この点において,これまでの推進者のやり方は,非常に欠けるところがあったといわざるを得ない。そして,その欠陥は,いまなお全く是正されていないのである。
 天然痘のような,過去ながい間人類を苦しめてきた感染症が,強制的な予防接種で根絶させることができたという事実は,公衆衛生の勝利だといって間違いはない。また,これらの施策は,相当のリスクを冒して実施されてきたことも確かであるが,社会がその施策を,当然のこととして容認してきたのは,そのリスクより,それによって得られる利益の方がはるかに大きいことを知っていたからである。その利益の前では,人権の制限も,時によっては,非常に不幸な副作用が生じるのも止むを得ない,そういう価値観が,大多数の人々の間に,不動の合意として確立していたからである。しかし,フッ素の場合はどうだろうか。
 議論がここまでくると,それでは果たして実情はどうなのかと,ここで,さきに列挙した問題点の内容を逐一検討してみる必要が生じてくるが,これらの各項目における主張には,それぞれ専門研究者の原著や総説が対応していて,それらを読みこなした上でないと的確な判断を下すことができないという仕組みになっており,この作業はそんなに容易なことではない。たとえば,フッ素有効仮説の根拠となっている疫学研究について統計学的な立場から批判できる素養をもった人が,同時に,フッ素の突然変異原性についての遺伝学的な論文を吟味できるかというと,なかなかそうはゆくものではない。
 そのためにはどうしても研究会を組織して共同作業でことに当たらざるを得なくなる。私どもが「日本フッ素研究会」というフッ素の毒性を追求する学会を組織し,この組織を通じて,海外の研究者と交流を重ねているのも,そうした必要性があるからである。この研究会は,「フッ素研究」という雑誌を年1回発行しているが,フッ素の毒性研究を目的とする専門誌は,この他には国際フッ素研究学会(The International Society for Fluoride Research-ISFR)の「フルオライド(Fluoride)」の他には幾つもないので,日本語で書かれているのに割合注目されており,化学関係の世界的なデータバンクであるケミカルアブストラックツ・サービスなども,毎号送れと注文をしてくる程である。
 さて,そのような次第で,わが国ではフッ素を批判する主な論文は,大抵はこの雑誌に掲載されたものか,それとも日本フッ素研究会に属する人が他の雑誌や単行本に書いたものかが主になっているわけであるが,そこでどのような議論が展開されているのか一寸紹介してみよう。さきに挙げた項目の内容は非常に膨大なもので,とてもそのすべてをカバーするわけにはいかない。その幾つかを紹介することにする。

9.問題点の検討その1
  フッ素は本当に虫歯抑制に効果があるのか
 
 さきに私は第5章でH.Tディーンという公衆衛生局の官僚歯科医師が,疫学調査の結果,DMFT(虫歯経験歯数)と飲料水中のフッ素濃度とに明瞭な逆比例の関係があることを認め(図1),この結果に基づいて行われた4都市でのフッ素化実験で,「実験地区の児童の虫歯の発生頻度は比較対照地区の子供より50~70%も少ない」という事実が報告されたと述べた。そして,これらの報告は,現在もなお,予防歯科学の世界では,いずれも疑うべからざる”神話”として取り扱われ,この神話に疑いを抱く者は過酷な糾弾に遭遇しているという事実を話した。21世紀になった現代の,しかも科学の世界でこんなことが行われるなど,じつに狂気の沙汰としか思えないが,「こんな子供だましのような議論には少しも科学性を認めることができぬ」と厳しい批判を展開したのが,第3章で言及した西独ガス・水道協会発行の「証明記録」である。
 この論文は正式には,「飲料水フッ素化の疑問に関する証明記録」(以下証明記録)という。フッ素に関するあらゆる問題点について議論しているため,相当長大なものであるが,翻訳されているためわざわざドイツ語で読まなくとも済む。
 この論文は,冒頭まず次のように述べている。
 
 「ドイツ歯科医師会はムシ歯予防の目的でいわゆる飲料水フッ素化(略)を奨励している。しかしながらアメリカ合衆国で1945年以来広範な規模で導入されたこの投与方法は,賛同ばかりでなく,様々な拒絶も見出されたのである。わがドイツ連邦共和国でも,この方法を採用したことで,歯科医師や医師(略)他の専門家集団の中にも矛盾が生じた。ドイツの給水事業の技術・科学的な中枢としてのドイツ・ガス・水道専門家協会(DVGW)には,すべてに関連した専門家たちが所属している。(略)飲料水フッ素化研究グループには医師や歯科医師そして法律家も参加している。(略)この研究グループは飲料水フッ素化の合目的性並びに利点や欠点について全体的な視点からのみ十分考慮された判断を下すことができるので,一面的な立場にたつことのないよう響告するために召集された。(略)当協会は,(略)積極的に支持する発言に対しても反対する極端な考え方に陥ることなく,疑念を表する意見を過大評価することなく,多くの側面から批判的な立場に注目する必要性を何度となく強調してきた。
 そして何年も前から必要な資料を集め,これを絶えず補充してきたが,いま,この膨大な資料のなかから,最も重要な部分を抜粋して公表する必要性が生じた。」

なぜ必要が生じたかといえば,西独において唯一試験的に認可されてきたカツセル市でのフッ素化実験を総括するためであるが,その判断の資料として,この論文の見解を熟読して貰いたいというのである。「熟読して欲しい」といえば穏やかであるが,その真意を端的にいえば,「こんな危険なバカげた実験は,続ける意味がないじゃないか」ということである。誤解を避けるために蛇足を加えておく。この優れた論文には,科学論文の常として,決して,今私が言ったような露骨な表現が用いられているわけではない。しかし,紙背から伝わってくる著者の真意は,まさしく私が述べた通りでなのである。ここにはフッ素化を支持するような判断は,何1つとして示されていない。それは,そもそも,ディーンの下した結論からして怪しいものだ,とこの論文の著者は,本稿図1について次のように述べているのである。

 「飲料水フッ素化推進論者たちは,彼らの見解の決定的な証拠を,天然に存在するものであれ或いは人工的に「整備されたもの」であれ,水道水のフッ化物含有量と虫歯発生率との間のいわゆる明快な負の関係があることに見出している。実際,アメリカ人H.ディーンの最初の大研究(略)は,それが2~3の同じような調査によって外観的に確証されるとそれだけにますます印象深いものとなったのである。この明白な疫学所見は何度も引用され,そして飲料水フッ素化のための積極的な意味に解釈されたのである。」
 
 しかし,それは余りに単純であろう。例えば,次のような結果は,どう評価するのだと,著者は,ディーンのグラフにアメリカの別な文献から得た同様な測量値をプロットし(図2),概略次のように述べる。

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「図2をよく見て貰いたい。ディーンが,明快な逆比例の関係があるとした曲線から,こんなにもズレた点が多いのは何としたことか。このズレは,飲料水中のフッ素濃度と虫歯の発生頻度とが,必ずしもディーンの指摘のとおりに逆比例ばかりしているではないことを示すものだ。この図からはディーンのような結論を引き出すことはけしてできない。何故なら,あまりにもしばしば高フッ素地域で,低フッ素地域よりも虫歯の発生頻度が高いからだ。」
 そして,別な文献を引用して図3を掲げ,前記の説明を敷衍して次のように述べる。これは実に鋭いディーン批判であるが,現在のレベルで判断すれば当然すぎるほど当然である。
 「西独のノルトライン・ヴエストフアーレン州の中からある地域を選抜し,ディーンの調査と同年齢の子供のDMFTとその地域の飲料水中のフッ素濃度とをグラフにすれば,その地域の選び方により,ある場合ではディーンと同様な逆比例のグラフが得られるものの,ある場合ではそれもと全く矛盾する結果となる。そしてこんな矛盾したグラフを作る操作など,ディーンが選択した地域のデータからだって可能である。」

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 なぜこんな結果となるか。それは虫歯の発生を左右する因子が,たとえ対象を飲料水中のイオンだけに限ってみても,フッ素だけとはいえまいという証拠の1つなのであるが,それについてのこの著者の説明を要約すれば次のようになる。この説明は,現在の微量元素科学の知見からみても,極めて妥当であると私には思える。
 
 「著者には決定的な誤解だと思われるのであるが,フッ素推進論者は水というものを一般化して捉え,その中には,たとえ,中央の給水施設で有害物資が取り除かれるにしても,様々な種類と濃度の塩類(鉄塩,マンガン塩,炭酸,有機物等)が含有されるという事実に気がついていない。硫酸塩に高濃度のマグネシウムが加わると下痢の原因となるが,何人もの研究者は,まさしくこのマグネシウムに抗虫歯作用があると確信しており,さらにモリプデンやバナジウム,ストロンチウムにもその作用があると考えている。また,フッ素症について少し注意してみると,ほぼ同じ濃度でこの症状が出現したりしなかったりしていることがわかり,このことからいっても様々な無機イオンの複合作用が知られなければならない。
 虫歯が,フッ素と同様に,水の硬度(カルシウム塩,マグネシウム塩の濃度)やほかのミネラル含有量とに深い関係があるらしいことは容易に想像がつく。北米大陸の諸都市の住民の虫歯罹患状況が,硬度の低い所(たとえばプラントフォード市・カナダ)よりも比較的高い所ではるかに少ないということがその証拠の1つである。他の多くの観察からもたらされる知見,たとえば,カルシウムの”緩衝的な”フッ素無毒化作用や燐酸塩の含有量に対する影響,またその逆の場合などについての観察も上記の事実と整合する。こうしたことがらを考慮すると,任意の水にフッ素を添加しても,それがはたして,自然にフッ素を含有している飲料水と同じ作用をもつものであるかどうか疑問である。フッ素の効果の証明のために提出された統計は,化学的な水質分析表の添付なしには殆ど意味をなさないといえるのである。」
 
 だから,ディーンの仮説の前提になっている考えは,

 「飲料水中の人工的なフッ化物含有量がそれ自体天然のそれと同様に作用するはずであるとする主張も無効となるのである。」

ということになるし,さらに,

 「素人でさえ気づくことであるが,ただ1つの影響因子をとりだして多因子的に制約された虫歯に対して広範な言明の基盤とすることはできないのである。」

となるのは当然であろう。
 ディーンの研究は,後に論争が激化してからアメリカの議会でも問題になり,その少なからぬ欠陥が指摘されたが,それではディーン自身,こういった批判にどのように対応していたかというと,証明記録は驚くべき1つの事実を明らかにする。それは,ディーン自身でさえ,
 
 「自らの統計を「無価値」であると言い表しているのである。」

という。そして,その根拠となる引用文献に,アメリカ議会のある委員会の議事録をあげているのである。
 こういう点で,「証明記録」という文献は徹底して実証的であり大いに信頼できるのであるが,フッ素有効説の根拠となったアメリカのフッ素化実験に対しては,さらに忌憚のない不信の念を露わにする。次にその議論を,もう少し詳しく紹介してみよう。
 
 フッ素が虫歯の発生を抑制するということを証明する場合に,DMFTという“指数”を1つの尺度にして,実験地区におけるそれを,比較対照地区のそれと比較して算出するということは前に触れた。そして,このDMFTとは,decayed(虫くった),missing(抜去された),filled(充填された),T(歯),の数をさすことを説明した。この歯の数を勘定するのは,被検者を検診に呼んで実際に口を開けて貰って確かめるわけだ。統計学的にいえば,そこに,まず,とんでもない落し穴がある,と「証明記録」の著者は述べる。その落し穴とは何かといえば,第一に虫歯の,特に初期の虫歯の診断基準が明確ではないということである。 これは私どもが学校の歯科検診などでよく話題にすることであるが,Aという歯科医師がある生徒を検診して虫歯が3本あるという結果を出しても,Bという歯科医師が,もっと施設のよい所で再度検診したら,6本だったというようなことは,その逆の場合を含めてざらにある。そしてこの場合は,MやFを0と仮定すれぼ,DMFTで50%の違いとなって表現されることになる。
 ある歯を健康な歯と見るか,それとも,初期の虫歯と見るかは,検査者によってそれほど個人差が生じる。勿論こうした誤差は,レントゲン写真などを併用することにより,大幅に改善されるが,集団の歯科検診では,このような機器は使用しないのが原則である。だからDMFTという指数にある厳密な意味をもたせるためには,一人の検査者が同じ基準で被検査者全員を検査するか,それとも,検査者が複数であるなら,結果が同一となるように予め十分なトレーニングを施しておかねばならないことになる。このことは,アメリカやカナダの後で,わが国で初めて実施された京都市山科のフッ素化実験(1952-1965年・主管者・美濃口玄京大教授)の効果を評価する際に問題となり,検診に当たった口腔衛生学会の委員らは,明確な検査基準を定めて予行演習を行ってまで客観的な結果が出るようにした。
 フッ素で虫歯が抑制されたと主張した時のアメリカの研究では,こんな厳密な調査が行われた訳ではない。それが日本でなぜ行われたかというと,この実験に関して疑問が生じたからなのである。即ち,美濃口教授の実験に対して,はるか以前からフッ素の毒性研究を行っていた鹿児島大学の副島侃二教授が強い疑義を発し,有効であると主張する美濃口教授との間に激しい論争が惹起したからである。そのため第三者である日本口腔衛生学会が調査に乗り出したのだ。その結果がどうだったのかといえば,実験主管者である美濃口教授の報告より,虫歯の抑制効果は少なく,しかも斑状歯の発生は多かったという結果が明らかになった。
 
 この経過のなかに,第二の落し穴が見すかされる。それは,ある薬の効果を判定する際に,どうやって関係者の主観を排除することができるかという甚だ厄介な問題である。
 薬効実験,それも大がかりなものともなると,実験企画者は,どうしてもその目的を成功させたいという欲望を押さえることは困難になる。フッ素化実験の場合に即するなら,実験地区の被検者の虫歯を少な目に見,対照地区を多めに見て,確かにフッ素化が虫歯を抑制したという結論に到達したいという欲望から免れることが難しい。このために「二重目かくしによる比較対照試験法」という,客観的判断をより可能にする試験方法が要請されることになってくる。この試験方法を採用すれば,被検者は,自分がフッ素の入った水を飲んでいるのかいないのか分からないように“目かくし”されねばならないし,また,検査する者も,その実験に利害のない者が選ばれた上で,被検者が実験地区の者か対照地区の者か分からぬように“目かくし”された上で,検査に当たらねばならぬということが要求される。これが“二重目かくし”という意味である。
 これは相当に厳しい厄介な手続きであるが,現在では,ある薬が,ある病気の予防や治療に対して効果があるということを立証するためには,この手続きによる試験を欠かすことはできぬとされている。そうでないものは,とてもまともな試験とは受け取られない。 医者の世界には昔から,“使った”“治った”だから“効いた”という“3た療法”というのがあるが,これを野放しにしておくと,怪し気な薬で大儲けをするという悪徳者が跡を絶たず,第一これでは,医学が何時までたっても科学として通用することなどできなくなる。
 「比較対照試験」というのは,「二重目かくし法」と“対”になっている方法で,試験効果をはっきりさせるために比較対照者を設け,この者には全く薬を投与しないか,場合によって薬理効果の考えられない“ニセグスリ”を投与して心理的影響を排除するなど厳重に管理することを意味する。フッ素化実験では,いずれも比較対照地区を設け,そこの住民にはフッ素添加されていない水を飲用させてフッ素の効果を立証したということになっているが,そのやり方は,現在のレベルの『比較対照試験』などといえるものではとてもない。しかし,今でも,「フッ素の実験には,こんな試験はできないし,またやる必要もないのだ」と強弁を張る推進論者(大学教授)がいるのはどうしたことだろうか。こんな知的レベルでは,とても科学者などつとまらないと思われるのであるが,残念ながら歯科という世界でこんな人物がいっぱしの教授として通用しているのは実に情けない。
 比較対照試験の主旨からいえば,フッ素化実験における両地区の住民の違いはたった一つ,「フッ素の入っている水を飲んでいるかいないか」だけに限られるべきだ。そうでなければ,「フッ素の効果」などとはとても結論できたものではない。しかし,アメリカの実験の場合は,そんな厳密なものではなかったのである。「証明記録」はそこを鋭く追求する。その部分の大意を要約する次のようになる。

 虫歯抑制効果を際立たせるために,まず被検者の選択が行われた。また,実験地区で統計にかり出された子供たちは,なるべく虫歯にならないように,学校医から歯磨きその他の様々な指導を受けた。こんな偏りのある操作ではじき出された虫歯抑制率なるものが,統計上どんな意味を有するといえるのか。統計学の領域では素人に等しい歯科医師らのこうした単純な評価は,不信の念を呼び起こすだけではないか。」(統計の批判的考察・36~40頁)
 
 「証明記録」の著者はきらに容赦なく,この件に関して様々な文献を具に検討した統計学者の激しい否定の言葉を次のように紹介しているのだ。

 今や私たちが観察の誤りのみでなく,統計的な誤りを排除しようとするならば,少しばかり(統計的)資料に目を通す必要がある。」(H.J.シュミット)
 
そしてこのような誤りが積み重なって

「予防医学の重大な誤りを惹き起したのである。」(C.F. ホイエル)

とも言っている。
 わが国でも,医学統計学の分野の第一人者である高橋晄正博士が,フッ素推進の根拠となった諸論文の統計学的な欠陥を指摘しているのは周知のことであるが,統計学の専門家から見ると,これらの疫学研究というものは十分信頼するに足りるものではないのである。

 それでも欧米の先進国では虫歯が確実に減りつつあるのは確かな事実であり,フッ素推進論者は,この現象を全てフッ素の効果(フッ素化とフッ素入り歯磨き剤の普及)に帰着させる。しかし,この現象を詳しく検討してみると,こうした主張は根拠のないコジツケであることがよく分かる。虫歯の減少は戦前の1940年代から起こってきている現象なので,何もフッ素が普及してから急に見られ出した現象ではない。その模様は,右の図3を見て頂ければ即座に理解できるであろう。
 これはニュージーランドのデータであるが,同国では早くから子どもの歯の検診制度が充実してしており,その結果が記録としてのこされてきているためにこのようなグラフを作ることが可能なのである。

10.問題点の検討 その2 見せかけだけの虫歯抑制効果
 
 しかし,幾ら歯科の学者らの統計技術が拙劣であったとしても,アメリカやカナダでのフッ素化実験の華々しい成功と言われる事実はどう解釈したらいいのか。前にも述べたように,これらの実験におけるDMFTは最低でも50%.ある場合ではじつに70%の抑制効果を示したといわれている。これらの研究は個別に行われたものだけに,この原因をすべて統計技術に帰せしめるのは,批判としてあまり説得力があるとはいえない。しかし,ここで「証明記録」の著者は,フッ素の副作用の一つである“歯の萌出の遅延”という現象に着目し,これこそがDMFTを撹乱させて統計上あたかも虫歯が減っているかのようにみせかける原因であると指摘する。つまり,「生えない歯は虫歯にもならない」ということである。これは一見,奇想天外な感じがするが,統計が科学としての切れ味を見せるのはまさにこういう所であろう。それに関する議論は次のようである。 フッ素化された水を飲用する子供たちの永久歯の萌出が,非フッ素化地域の子供たちに比較して遅延することは相当はやくから観察されていた事実である。これは様々な研究者によって実証されているために,現在でもフッ素進者はこの事実を否定できない。しかし彼らは,否定できないとなると今度は巧妙にこじつける理屈を発明するので,この場合でいうなら,「萌出が遅延するのは,遅れるのではなく,正常な時期に萌出するようになったので,むしろ好結果なのである。つまり,フッ素の摂取によって乳歯虫歯が減少して早期喪失が防がれた結果,以前は異常に早く生えてしまった永久歯が正常な時期に生えるようになったのである」と説く。
 しかし,この説明の妥当性はすこぶる怪しい。「証明記録」は,ある研究を引用して次のように述べる。

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 アメリカ官庁の統計資料からスイスの研究家ライムグルーバーは曲線をまとめあげ、(図4)そして以下のような解釈を加えた。

「曲線①は飲料水フッ素化を行っている町のDMF指数の(略)年ごとの増加を表わし,曲線②は同様に飲料水フッ素化を行っていない町の指数の年ごとの増加を表す。最後に曲線③は生え終わった歯の年ごとの増加を示す。曲線③は歯の萌出期が2つの山を成すことを示している。1つは6歳と7歳の問であり,2つ目は11歳と12歳の間である。その際著者は通例に従って3番目の山である大臼歯(村上注 : 第2,第3大臼歯のこと)の萌出を考慮しないでおいた。ところで2つのDMF曲線を萌出曲線と比較すると,すべての曲線がそれぞれ2つの山を形成するが(略),これらの山が時期的に一致しないという大きな相違を伴うということがはっきりと示されているのである。」
 
 この一節にひき続くライムグルーバーの考察を要約すれば次のようになる。
 
 「これらの曲線の折れ曲り具合をよく観察してほしい。7歳の萌出の山のあと,ほぼ1年経過して曲線②の第1の山がくるが,曲線①の山はそれからさらに1年数カ月遅れてやってくる。11歳半の萌出の山につづく曲線②曲線①の山は14歳でほぼ一致するようになるが,この第1の山のズレこそ永久歯の萌出遅延のため,虫歯が遅れてやってくるという現象を示しているのである。」
 
 かつて私は,このライムグルーバーの図4について,歯科医師を読者とする専門誌にかなり長いコメントを発表したことがあるので,それを引用する。

 「この図4は筆者(村上)にはじつに興味深く思われる。試しに14歳のところで横軸と垂直に補助線を引き,曲線①,曲線②とその垂直との交点を,それぞれA14,B14としてみよう。このB14とA14の縦軸上の差が14歳のときのDMFT指数の増加の割合の差つまりフッ素化による虫歯抑制率ということになる。曲線②は14歳をすぎるまで常に曲線①の上を行く。ということは,それぞれの年齢において,A14B14と同様に,A6B6,A7B7,・・・…と交点をとり,次々とその差を求めれば,量に多少の違いはあっても,たしかにフッ素化による虫歯抑制の効果は認めなければならない。しかし,ここでB点に比較するAの点を2年ほど先にずらして,B7とA9,BllとA13などとを比較してみればAとBとの縦軸上の量つまりDMFの増加の割合はほとんど変わりがないものとなる。
 同年齢の子供を比較してみれば,フッ素化により確かにDMFは少なくなるが,これはフッ素の作用で,生えている歯が少なくてるためで,2年もたてば遅れて萌出した歯が虫歯になり,結局はフッ素化しない場合と同じ結果になってしまうのである。」

 さてここでもう一度図4を観察していただこう。15歳の少し手前で曲線①と②は明瞭に上下の関係が逆転しているのがおわかりであろう。つまりフッ素化された地域の子供たちの方が,この時点で虫歯が多くなっているのである。フッ素反対論者の間では,フッ素を長く適用していると,歯質が劣化し,むしろ虫歯が増えるのではないかといわれ,日本でもこのような結果を示唆する研究が公表されているが,この図は,こうした懸念が決して事実無根ではないことを示しているものと思われる。しかし,資料に基づかぬ推測はやめよう。ライムグルーバーのこの研究では(略)ここから先のデータは明示されていないのである。
 
 このDMFの遅延増加という現象につき,「証明記録」の著者はさらに別な文献を引用して次のように述べる。
  「(このライムグルーバーと同様なことを)アメリカ医学会はほかの言葉でフッ素化された地域の子供たちがフッ素化されていない対照地区の2,3歳年下の子供たちと同じようなムシ歯の割合を有していると述べている。

そしてさらに,図5,図6,図7を掲げて,

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 「ガイアーもフッ素化された地域のDMF indexの取り戻しを証明したのである。つまりフッ素擁護者の大きな誤りの1つとして,彼らが一過性のムシ歯の減少(歯の萌出遅延による)を真のムシ歯の減少であると主張していることがわかるのである。」

 「パルエフによるニューバーグ市/キングストン市の実験データの検討ではおよそ3年の萌出遅れのあることがわかる。キングストン市の6歳の子供たちは,フッ素化きれたニューバーグ市の10歳の子供たちと同じDMFindexを持っていたのである。(本稿図5)この確認は何度も確証され,たとえばグランド・ラピッズ市(本稿図6)やワシントンD.C.市(本稿図7)の飲料水フッ素化導入前後のムシ歯発生率の比較でもそうなのであった。ワシントンD.C.市では遅滞日はおよそ1年であったにすぎず,次のことをはっきりと示しているのである。つまり年ごとのムシ歯の増加は飲料水フッ素化にもかかわらず同程度のままであった(平行曲線ないしは同じ右上りの傾き)。すなわち飲料水フッ素化は効果がなかったということなのである。」
 
 「証明記録」は,統計学的観点から以上のようなフッ素化批判を行った世界中の学者8名を列挙し,オーストリアのツイーゲルベッカーの名を以ってこれらの批判者を代表させて次のように述べている。
 
 「統計学と論理学の数学的な装備を用いてツイーゲルベッカーは新旧のデータと曲線を検討した。そしてアメリカの統計ばかりではなく,イギリス,オランダ,スイスおよびドイツ民主共和国の統計の科学的な方法論と解釈に関して厳しい批判を与えているのである。彼の論証をゆさぶろうとするさまざまな試みは失敗に終わっている。(略)彼はこのように結論づけている。『厳密な研究に従事し,そして調査方法の問題を真剣に取り上げることに慣れた者は誰も飲料水フッ素化のために主張されている,いわゆる科学的な基盤を認めることはできない。』」

 「証明記録」によれば,1973年にシュトゥツガルトで開かれたシンポジウムで,ツイーゲルベッカーは並みいるフッ素推進者を前にして講演を行い,フッ素化の成功例といわれる統計や,フッ素安全説に対して仮借なき批判を展開した。
 ツイーゲルベッカーと実際に会見し議論を交したことのある九州大学歯学部の松田政登助手によると,彼は当時南オーストリーのグラーツにある環境調査研究所の研究員(教授)だったそうですが,いわゆるフッ素化の「科学的根拠」なるもののデタラメさには我慢できかねていたようで,彼の批判は,じつに容赦がない。「証明記録」に散見する彼の考えを集めて個条書きにすると大体次のようになる。
(1)歯の成長と虫歯の経過は代数的な取り扱いで記述できる。
(2)フッ素は歯の成長の時間経過の障害の原因となる(萌出遅れ)。
(3)歯の成長を無視した統計と,虫歯に与える様々な因子(栄養,口腔の衛生状態,生活習慣,環境条件,歯科医師の供給状況など)に対するフッ素推進者の解釈は信頼できない。
(4)飲料水フッ素化は,真の意味で虫歯の予防措置とはいえない。
(5)フッ素に対する安全限界の根拠がない。
 これらの批判は西独保健当局のフッ素化政策に決定的な影響を及ぼした。即ち,ドイツは,1953年から続けていた唯一のカツセル市のフッ素化実験を1971年に中止し,この問題に,はっきりと決着をつけたのである。そしてこの動きはオランダやベルギーなど西ヨーロッパ各国に大きな影響を与え,特にオランダでは,フッ素化の中止を求める市民の訴訟が最高裁で勝訴し,15カ所にも達していたフッ素化地区が全部廃止された。そればかりか,憲法で水道にフッ素を添加することを非合法とさえしたのであった。
 
 ここで,アジアでの研究を紹介しておく。
東京医科歯科大の今井良次氏(以下,今井)は,日本全国491市町村,採水件数1,657件,検診学童数20,272人という広汎な調査を行い,統計専門家の協力のもとにこのデータを数学的に解析した結果,学童永久歯に対するう蝕予防の最適濃度という観点からすれば,飲料水中のフツ素濃度は,0.20~0.39ppmであり,0.40ppm以上の場合は希釈されねばならないと述べた。この研究によれば,フッ素濃度が0.3ppmを超えて1ppmに近づくにつれて却って虫歯が増加している事がわかる。
 さらに大規模な研究を行ったのが,インドのテオティア博士夫妻である。すなわち,夫妻は,1963-1993年の30年間にわたってインドの児童40万3百人について虫歯や斑状歯と飲料水中のフッ素との関係を調べ,ディーンとは全く逆に,虫歯はフッ素の過剰摂取とカルシウムの不足によって起こると述べている。そして,虫歯を予防するには,飲料水中のフッ素濃度を0.5ppm以下に抑え,食事中のカルシウムを1日1グラム以上摂取すべきであると主張した。虫歯とフッ素およびカルシウムとの関係については,テオティア博士の研究以上の大規模な研究を人類はいまだ有していないので,今のところこれが決定的なデータである。いずれにしても,アメリカという限定された地域でのディーンの研究の結果が,グローバルな普遍性をもつとする根拠はどこにもない。
 
 現在,ヨーロッパ先進諸国のうち,フッ素化された水を飲用している人々の割合は,アイルランド50%,イギリス9%,スイス4%,スペイン1%以下とごく少数になってきているが,ご注意いただきたいのは,こうしたフッ素化退潮現象は,政府や行政当局の配慮で達成されたのではけっしてない,ということである。あくまで市民が,自分たちの安全を自分たちの手で確保するために施策の科学的根拠を吟味し,行政や歯科医師会という一種の権力側と対立する形で運動を起こしてこのような結果をかちとってきたのである。そして,その背後でものを言ったのは,歯という硬組織に注目するばかりで全身の健康に対して何らの考慮を払えない歯科医師に対して,慢性中毒患者に接する機会の多い医師が,あえて同業者である歯科医師会に論争を挑んで勝利したということである。
 そういう意味で,フッ素問題の底にあるものは,”予防歯科学に対する科学としての信頼性”や”民主主義”に関する問題でもある。“公衆衛生的施策”というものは,予防注射ひとつ取り上げても分かるように,医学が行政権力と結びつかなくては力を発揮できない性質のものである以上,それが妥当かどうかは市民がいつも監視する必要があるのである。

11.論争の天王山 フッ素とガン
 
 さて,ここでもう一つの問題点の検討として,フッ素とガンの問題を取り上げてみよう。この問題は,事が事だけに,フッ素の様々な問題点のなかでも最も激しく論争されてきた。事実アメリカでは,その議論の妥当性をめぐって,議会の委員会や裁判所で,研究者間の対決が行われてきたほどで,その意味では,まさにフッ素論争の天王山といえるだろう。
人間がフッ素によりガンの恐れにさらされているということを実証するためには,イン・ビトロの発ガン実験と,実社会における人間の死亡率研究(疫学研究)とを欠くわけにはゆかない。しかし,本論程度の短い評論文でその委細をすべてレヴィユーすることは到底不可能なので,幾つかの研究のエッセンスを紹介することになるのはお許し願いたい。 さて,まず実験の方であるが,フッ素の“突然変異原性”っまりフッ素が細胞のDNAを破壊して,これに突然変異を引き起すことに疑問を呈する研究者は,この分野の専門家といえるほどの人なら,現在では殆どいないといえるだろう。化学に関する世界的なデータ会社であるアメリカのケミカル・アブストラクツ・サービスに勤務していた生化学者ジョン・イアムイアニス博士の渉猟によれば,1973年から1985年までの間に,動物を用いて行われたフッ素の変異原性実験として11研究が挙げられているが,(表3)もとよりこれがすべてではない。

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例えば,そこには,日本の研究として筒井健機教授ら(日本歯大・薬理)の2つの研究(1984年)が紹介されているが,同じく1984年に発表された外村晶教授ら(東京医歯大・医・遺伝学)の実験は記載されていない。
 筒井教授らの研究は虫歯予防に使用されている「フッ素(NaF)がヒト2倍体細胞に染色体異常と不定期DNA合成を誘導すること」を立証したのち,シリアンハムスター胎児細胞に悪性転換を起こすことを証明したものであり,外村教授らの研究は,ヒト「培養リンパ球を用いた24時間処理によって1mM(42ppm)以上の濃度のNaFでは濃度と染色体異常誘発とのあいだに相関関係があることをあきらかにした」ものである。その結果,同教授らは次のように述べている。「う蝕予防のため洗口に用いられるNaF溶液(略)は,通常用いられる濃度の約1/500~1/5の濃度で染色体異常が誘発されるという事実は,特にNaFが幼児に用いられることを考慮すると,その使用に対してかなり慎重な配慮を要するものといえる。(略)」
 しかし,まことに奇妙なことに,表3を見れば明らかなように,イ博士が挙げている世界中から集めた11研究のなかで,たった1つだけ,フッ素には変異原性がないとする研究があるのだ。その研究がどこで行われたかと調べてみると,何とNIDR,つまり,初代所長に,フッ素化の父と呼ばれるH.T.ディーンが就任し,それ以後一貫してフッ素推進派の一大センターとなっているアメリカ国立歯学研究所である。NIDRは,この自己が行った唯一の研究に基づいて,「フッ素には変異原性がない」と主張しているばかりか,「突然変異原性の疑問は〔フッ素反対派が過去に主張した〕使いふるされた問題でしかない」と公言しているのである。はたしてこんな態度は科学の上で許されるものか。
 
 染色体異常は,勿論そのままで直接ガンの発生につながるものではない。しかしこれは重大な遺伝的障害であり,染色体異常をきたした細胞は,細胞分裂の際に遺伝物質が過剰になったり消失したりして多くは死滅する。しかし,全部が死滅するわけでは勿論ないので,そうなって生きのびた細胞から奇形やガンが発生するわけである。筒井教授の実験はこういう細胞がガン細胞に転換したことを直接実証したものである。
 こういう事実が発表されると,フッ素推進者はただちに次のように反論するのが常である。「フッ素(NaF)がガンをつくるのは確かだとしても,動物の体液が,実験に用いられた20~50ppmなどという高い濃度になるためにはとんでもない量のフッ素を摂取しなければなるものではない。発ガン実験などでガンが発生したからといって,フッ素応用でガンが生じるなどというのは事実無根だ」と。
 私はこういう議論を聞かせられるたびに思うのだが,こういう人たちの科学的素養を,いや,「生命の機序」に対して医師として必要な想像力の恐しいまでの欠如を,一体どう考えたらよいのだろう。歯の表面に塗布するフッ素溶液は9000ppmもの高濃度の溶液をを用いるのが普通であり,しかも,それが3-4歳というような幼児の口の中に,吸引の配慮も何もなく,極めて無造作に塗ったくられるわけである。さらに最近では,この溶液で洗口させるなどという非常識な論者まで現れてくる始末で,歯科界では誰もこれを批判する者がいないばかりか,むしろ虫歯予防に熱心な歯科医師として賞賛される気配すらあるというのが現状である。一口に無知といってしまえばそれまであるが,こういう手合いは,先にあげた11研究の中では,わずか0.6ppmでもフッ素がヒトの白血球に遺伝子障害を起こすのを立証したと実験があることなどを知らずに,あるいは一切無視して我田引水の議論を構築するのだとしか思えない。
 フッ素推進というのはそのようにして行われている一種のイデオロギー運動であるから,「フッ素化によって実際に多くの住民がガンで死亡している」という結果を提示した統計研究などが現れると,もう逆上したとしか思えないような感情的な反応を示してイヤガラセ等の一種の政治運動に走るのである。この反応を見ただけで,フッ素応用が”科学”ではないことがよく納得できる。その実例を次に示す。
 ディーン・バーグ(元アメリカ国立ガン研究所・生化学部門主任研究者)とジョン・イアムイアニス両博士は,1975年に「フッ素化したアメリカの大都市とフッ素化をしていない大都市の住民のガン死亡率に相違が見られる」という研究を公表した。
この研究の統計データはすべて官庁によって公表されたものを使用した。その模様は図8に示されているとおりであるが,明らかにフッ素化と関連するガン死亡率の上昇が見て取れる。この研究から両博士は、「毎年アメリカでガンのため死亡している者のうち,1~2万人がフッ素に起因するガンで死亡している」という意見を公表した(下図)。

 

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 特にこのグラフで印象深いのは,フッ素化非フッ素化両都市群ともフッ素化されていなかった1940~50年の間では死亡率が全く重なっていることで,そこにこの研究の客観性があると思われる。
 しかし,これが発表されると,直ちにアメリカの国立ガン研究所が,「フッ素化都市群における死亡率の上昇は,フッ素によるものではなく,これらの都市における住民の性,年齢,人種構成が変動したためである」と批判し,その批判を正当化するデータを合衆国議会下院のフォンティン小委員会に提出したのである。そこで議会の公聴会(1977)での両者の対決という成り行きになったが,その過程でバーグ,イアムイアニス両博士は,批判者のデータには,両博士が使用した公表されたものと違って作為的な欠陥があり,フッ素化都市においてガン死亡率を高める数値が90%近くも省かれたものであるという事実を明らかにし得たのである。そしてそれを訂正してみると,批判者の方法に従って「性,年齢,人種構造の変動」を考慮して補正しても,依然としてフッ素化に関連するガン死亡率の上昇は不変であったという事実には変わりがなかったのである。
 この対決のなかで,きらに驚くべ事実が判明した。即ち,この小委員会の議長をつとめていたフォンティン議員は,ガン研当局がこのバーグとイヤムイアニスによる指摘をかくしたままこの欠陥データをイギリスの統計学者らに送り,彼らは彼らで,この欠陥データによる別の「フッ素とガン死亡率とは無関係」という研究を自分らのオリジナルな研究であるとして発表したことを認めたのである。フォンティン議員のスタッフの助力で,イ博士はこの間の事情を証明する手紙を入手し,自著の巻末に参考資料として掲げている。
 1978年,この対決は議会からペンシルヴァニアとイリノイの法廷に移り,3月から11月まで合計21日間にわたって開かれた公聴会で,激しい攻防が継続した。ここでは両博士の研究を否定したイギリスの研究者が参考人として召喚された。その対決の概要はイ博士の著書に記録されているが,尋問の最後でイギリスの研究者が、「そのとおりです。私はまちがっていました。」と証言しているのは,これでこの問題の決着がついたことを物語っているものだ。
 
 この過程で両博士に加えられた誹誇まで一々紹介しておく必要はないと思われるが,こういうリンチまがいの弾圧があったことを1988年にアメリカ化学学会の特別報告書が認めるや,さすがアメリカのマスコミも一斉に筆を揃えて“科学スキャンダル”と当局を非難し,高級紙クリスチャン・サイエンス・モニターなどは特に力をこめて,“フッ素化政策は悪質な科学を育てた”,“政治的プロパガンダを科学的事実より優先させることは民主主義を堕落せしめるものだ”というコラムを掲げたのは,アメリカの言論がまだ健全に機能している証拠なのであろう。バーグ博士という研究者は,35年間アメリカの国立ガン研究所に勤務し,後には主任生化学者として様々な賞を受け,彼と共同研究した者の4名までがノーベル賞を授賞しているくらいの超一流の研究者であるが,この輝かしい人物の上にも,フッ素化を否定してからは予想もしなかった冷酷な仕打ちが待ち受けていたということを彼は述懐している。(同様な事は,原発の安全性問題に関して,低レベルの放射能の危険性を実証した放射線科学者や,環境科学者の上にもしばしば起こっており,政府の事業についてはアメリカでも言論の自由が保証されていない事は知る必要がある。政府や行政が,官僚の自己保身のため言論の統制や情報を隠蔽するのは,アメリカといえども日常茶飯なのだ)。
 
 このような結果になった以上,議会としてもバーグとイアムイアニスの研究を無視することができず,議会は1977年に公衆衛生局に対して,フッ素がガンを惹起するのかどうかについて決定的な研究を行ってその結果を報告するよう命令した。この命令が最終的な報告書となって現れたのが,わが国でもよく知られた「NTP研究」(1990)である。この研究が公表されるまでには10余年というバカ長い年月を要したが,こんなに長くかかったのは,もちろん公衆衛生局の意図的なサボタージュやデータの改ざんのせいである。その模様は,この研究に参画した環境保護庁の科学者,技師,弁護士等で組織しているユニオンによって詳細に公表されている。(このユニオンは,庁のトップらの方針に背いて,フッ素は国民の健康に危害を加えるものだという立場をとり,フッ素化に公然と反対している。)
 この研究を通じて,当局は何とかして「フッ素には発ガン性がない」という結果を提出すべく策謀したのであるが,歴然たる結果は如何ともしがたく,シブシブながらフッ素は雄のラットに骨肉腫を起こすという事実を認め,フッ化ナトリウムは「発ガン性があるともないともいえない両義的な物質」だとした。
 しかし,このデータを逐一解析した環境保護庁の首席毒物学者であるウィリアム・マーカス博士はこの結論に意義を唱え,フッ化ナトリウムには明瞭な発ガン性があるとする意見を公表した。不幸にも,博士はこの後,当局より勤務ぶりに難癖がつけられてクビになったが,博士は裁判闘争をつづけて勝訴し,5万ドルの賠償金とともに復職をかちとり,当局による控訴も,労働省長官から却下されて汚名をそそぐことができたのであった。同長官は「マーカス博士が公共に対して真実を語った報復として庁が免職した」との非難を公表している。行政が腐敗しがちなのはどの国でも同様であるが,フッ素の問題にこのような事件があまりにも多いのは,フッ素の背後に巨大な権力の利害が結びついているからであろう。
 さて,この両博士の研究が日本に紹介されたのは高橋晄正博士(内科・当時東大講師)によってであるが,この紹介が世に出るや,これを全部デタラメとするフッ素主義者(私立歯科大教授)との間に険悪な論争がもちあがった。この論争は学術論争の域をこえ社会的対決にまで発展するかと思われたが,結局この教授が,自分の説を「いきりたって,生の感情をぶちまけたため,ひとりよがりになり,かなり汚れた論述の体をなさいもの」であると反省し,高橋博士に謝罪して決着がついたかのように思われた。しかし,この教授は,それから十数年たった今日なおも無署名の誹謗的文献を発行したりしてフッ素推進や高橋博士の攻撃に躍起となっており,仮面を剥がされたイギリスの統計研究などをもちあげ,高橋博士などを「世に混乱を起こすもの」といった調子で攻撃しているので,この反省がどこまで深く行われたのかすこぶる疑問である。
 フッ素論争には,こういう,およそ非学術的な不快な事態が非常に多い。現在この問題で苦しんでいるのは,県や市の教育委員会が,公的事業としてフッ素洗口を推進している地域の学童の父母や養護教諭たちであるが,最近,各地でも紛争が勃発する気配があるようで,私のもとにそういった人たちから続々と手紙が寄せられる。その内容はいずれも同じようなもので,「フッ素推進の講演会で安全性について質問したら,講師である大学教授からえらい権幕で詰問されたが,真実はどうなのか」とか,「子供のフッ素洗口を断ったところひどい個人攻撃にあっている」とかいう性質のものである。こうした仕打ちはフッ素に反対する新潟の一部の人たちが十数年来経験してきていることであり,日本弁護士連合会のすぐれた意見書が公にされた今日もなお苦しんでいるところである。
 何故,虫歯の予防などで,市民がこんな目にあわねばならないのか,私は十数年来心底不思議でしようがなかったのであるが,最近アメリカで,フッ素の背景にはこれを是非とも世界規模で推進しなければならぬ”産軍複合体”と呼ばれる軍需関係の巨大な勢力の存在が明らかにされ,それと結託する保健官僚と,その尖兵をつとめる官庁諸機関の暗躍が示唆されて初めて納得できた次第である。このような事実は,この問題の暗部について何事も知らずにいるわが国の市民の人たちには,まず想像もできない事であろう。
 この点では,我々医師や歯科医師が活動できる範囲は極めてかぎられてくる。幸いアメリカでは,すぐれたジャーリストや歴史家たちが,かつて機密とされた文書の解読や,関係者のインタビュー等を重ねたレポートが相次いで発表されており,フッ素問題にひそむアメリカのエスタブリッシュメントたちの巨悪をあばきつつある。それが国民の巨大な怒りとなって”フッ素応用”というベルリンの壁を崩壊させるのも時間の問題かと思われる。
 
12.フッ素による脳機能障害
 
 最後に現在問題になりつつあるフッ化物による脳機能障害をとりあげておこう。
フッ素に脳機能を障害する可能性があることは,ウォルドボット博士らの先駆者によって示唆されていたが,脳科学(ニューサイエンス)の進歩とともに近年急速に解明されつつある。
 この点で特に注目されるのは,従来アメリカの政府系(フッ素推進派)の学者らによって,「フッ素は血液脳関門を透過せず,従ってフッ素は脳を汚染しない」とされていた事実が崩れ,フッ素は脳に蓄積し,その結果,「学習障害」「注意欠陥障害」「注意欠陥多動障害」等の機能奇形を起こすという衝撃的な事実が明らかになってきたことである。これは疫学的にも,フッ素汚染地区の学童のIQ低下等の事実と整合し,鉛やアルミニウム等の重金属と協同作用をして,少年の「非行・犯罪」やアルツハイマー病の危険因子の一つとして著しい注目をあびつつあるのである。血中の鉛とフッ素との関係について,3万人以上もの多数の青少年犯罪者について調査を行った米ダートマース大学のロジャー・マスタース教授は,「環境汚染や危険な水道水のフッ素添加は,(略)倫理的正義に反する行為だ。純粋無垢な子供たちが水道水によって汚染されるようなことは,決してあってはならぬ」と述べている。これらについては拙論「フッ化物による脳機能障害について」に私は詳しく述べおいた。
 微量とはいえ日常的に長期間フッ素を摂取し続けるのは,想像以上に危険である。単なる歯磨き剤であっても,それが予想もつかない深刻な事態を引き起きおこさぬという保証はどこにもない。事故がおこらなければ信号機はつかぬというのが日本の現状であるが,たとえ信号機がついたところで,不注意ならやはり事故は起こるのである。
 ダイオキシンや核燃料の臨界事故は大きな騒動になったが,私の見るところ,フッ素の弊害はそんなものの比ではなさそうである。地球規模での犠牲者の数でいえば,チェルノブイリ事故が続け様に起こっているようなものである。幸か不幸か,その事故は劇的な形では滅多に一目をひかず,隠微に姿かたちを変え,ガン,関節炎,ダウン症,骨粗鬆症,脳奇形,全身の身体障害等となって人類を蝕む。、医師に課せられた公衆衛生の責務とは,まさにこれらの災厄を予防し闘うことにある。

13.  おわりに
 
 民主主義による政治体制は,国民による,国民らの,国民のための政治であるのがあくまでも原則であろう。そういう意味で,健康政策も,一部の行政官や行政御用達しの大学教授らの考えだけで,間違いなく行われるかどうかは,国民が常に監視し続ける必要がある。まして,その任に当たる人たちが,巨大な権力に支配されて一つのドグマを信仰し,それによって利益の配分を得ているとなればである。
 産業革命以後,人間は便利さだけを追及して今日の文明を築いてきた。その蔭では,たとえやむを得ない事情があったにせよ,安全性が犠牲にされてきたことはいうまでもない。ことさら不安を煽情することは慎むべきであるが,事実を糊塗し隠蔽することはそれ以上に科学者の行ってはならないことであろう。そしてそこで強く要請されるのは,”自由な視座”と”包括的な価値判断”である。
 私はフッ素問題に関して市民の人たちが十分賢く,かつ強くなることを願わずにはいられない。それは,決して「与えられるもの」ではなく,「自らかちとる」べき筋合いのものである。その意味で,「フッ素論争」は,21世紀においてすぐれた文明を築く一つの試金石であるようである。
 
文  献

村上 徹
1987「フッ素信仰はこのままでいいのか(1)」,ぐんし(群馬県歯科医師会会報)No.291,PP.21-24。
村上 徹
1988「群馬県渋川市におけるフッ寮洗口問題の経過報告」,フッ寮研究,No.9,PP.3-11。
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1978「フッ素とむし歯」,三一書房,PP.204-296。
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Bette  Hileman
1988 August l Fluoridation of Water  Chemical&Engineering News. PP.26-42。
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                        (完)